中央最低賃金審議会の小委員会が開かれ、最低賃金の全国平均を時給1,054円に引き上げる目安をまとめました。現在の平均額から50円(5%)の引き上げで、過去最大の上げ幅となります。昨年も話題となりましたが、時給で働くパートの方は時給が上がることで年収が上がり「年収の壁」に突き当たることとなります。103万円、106万円、130万円の壁とありますが、私の身近でも130万円の壁を気にしているパートの方はとても多いです。130万円の壁とは社会保険の扶養に関する壁です。130万円以上の年収となることで扶養から外れ、自身で国民年金・国保に加入することになります。すると、手取りは以前より減ってしまう。それは困るので130万円未満になるよう働き控えをする。といった事態が起こります。この対応策として、昨年「年収の壁支援強化パッケージ」というものを政府が打ち出しました。これはパート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばす等により収入が一時的に上がったとしても、事業主がその証明をすれば引き続き被扶養者認定が可能となるものです。ただ、これは一時的に上がってしまったことに対しての処置で、被扶養者が勤務している事業所において、今後も引き続き収入が増えることが確実な場合(基本給があがった、恒常的な手当が新設された、労働契約の変更により所定労働時間・出勤日数が増加した場合等)は、一時的な収入変動とは判断しません。(厚労省のQ&Aより)とすると、最低賃金引き上げにより基本給が上がり、従来通りの働き方をしていても130万円以上となってしまう方は国保加入または、勤務を30時間以上になるよう労働条件を変更して社会保険に加入するといったことが必要になります。これまで130万円ギリギリにおさまるように働いていた方には余り意味のないパッケージとなっているようにみえます。この様々な「壁」をどう変えていくのか、最低賃金引き上げと共に総合的に見直していくことが急務だと考えます。
少し前に、建設業の事務をしている知人と話していて、思わず「えっ?」と声をあげてしまうことがありました。知人が昨年の夏に経験した出来事ですが、事務所の冷房をつけて仕事をしていたところ、外出先から帰ってきた社長が「何で冷房をつけているんだ。現場の人は暑い中、仕事をしているのに申し訳なくないのか。窓を開ければいいじゃないか」と言い、冷房を切ったそうです。夏真っ盛りの時期にです。それから退社時間まで暑い中仕事をし、のぼせてしまい体調を崩す人もいたというのです。事務所内に温度計はないため室内が何度位なのかは不明だったそうですが、風も通らず蒸地獄の様だったと話していました。冷房を付けられない日が何日か続き、こういったことでは仕事にならないと訴えたところ「暑くなる11時ごろになったらつけても良い」という許可が下りたので11時を待って冷房をつけるようになったとのこと。それでも、猛暑日は朝から暑くて汗を拭きながらパソコンに向かっていたので集中できなかったそうです。社長も汗だくになっていたようですが、自分が「現場の人と同じ環境で働こう」といった手前引けなかったようです。社長の「現場の人が頑張ってくれているのだから」という気持ちは良いと思うのですが、だからといって事務の人に同じ環境で働くことを強いるのは問題です。労働安全衛生法の規程に基づき定められた「事務所衛生基準規則」では、【事務所において、事業者が空気調和設備を設置している場合の、労働者が常時就業する室の気温は18度以上28度以下および相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない】としています。社員が働らきやすい環境を整えることで生産性もあがるのではないでしょうか。今年の夏も暑そうです。熱中症対策を万全にし、暑さを乗り切りましょう。
先週の月曜日、今年初めに法人設立した方と雑談をしていると「そういえば4~6月の給料の平均を出す書類ってもうすぐ提出するんですよね?設立時に年金事務所の人にそういう説明を受けたのに、まだ何も資料が届いてないけど、こちらから何かアクションを起こさないといけないんですか?」と聞かれました。4~6の給料の平均を出す…といえば算定基礎ですね。7月10日が算定基礎届の提出期限となっています。毎年6月末頃に提出書類が届くので、それを待って書類に記入したら良いですよとお伝えしたところ、「7月10日迄なのに、そんな悠長な流れなんですか?」とおっしゃっていました。確かにギリギリではありますね。7月1日を基準に4~6月に支払った給与の平均を出すので、7月に入ってからしか届け出ができません。そういったこともあり6月下旬頃の到着なのだと考えられます。私も以前は「まだ届かないのかな??」と思っていましたが、このギリギリな到着に慣れてしまっていました。6月初旬に給与支払がある事業所なら早くから準備をすることは可能なので、もう少し早く届くことが望ましい気もします。慌ただしいですが届き次第、早めに届出を行いましょう。
先月末辺りから顧問先事業所の給与計算担当者の方に「定額減税ってどうすればいいんでしょう?」と相談されることが増えました。基本的には税務のプロである顧問税理士さんへご相談されることをお勧めしています。ただ、「年末調整でまとめて処理してしまえばいいんですよね?」といった質問には「それは認められませんよ」と即答しています。先月末に政府は「6月給与から所得税減税を反映しない企業には罰金を科す可能性」があるとの見解を示しました。「6月から減税を反映しない場合、税引き後の給与が本来支払われる額より少なくなるため労働基準法第24条違反となる可能性がある」というのです。 また、給与明細に減税額を明記する必要があります。これが6月の給与明細書の交付時に対応が間に合わなかった…といった場合については基本的に罰則が適用されることはないということのようです。給与計算担当者も混乱していますが、給与ソフトの会社の方も対応に追われ大変だろうなと推察します。色々思うことはありますが対応するしかありません。私もこれから顧客事業所の6月給与計算を行います。経験のないことで不安ではありますが、国税庁HPを頼りにやっていくしかないなと考えております。
通常、随時改定は①固定的賃金に変動があった②変動月から3か月間に支給された報酬の平均月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた③3ヶ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所勤務の短時間労働者は11日)以上という3条件を満たした場合に、定時決定を待たずに月額の変更を行います。この変動月について、通常は変動があった月を起算月として考えればいいのですが、遡及して支払が生じた場合に起算月を悩むことがあります。例えばⒶ単純な給与計算のミスで扶養手当を4月から支給するはずが支給できず、5月に2か月分支払った場合Ⓑ毎年4月昇給だが、昇給額の決定が遅れ、5月支給時に遡及して4月分の昇給差額分を支給した場合などが考えられます。Ⓐの場合は、4月に支給することは決定していたので、4月を変動月と考えます。Ⓑの場合は、実際支給した月の5月を変動月として届出を行います。遅れがないことが一番ですが、もし遡及して支払うような場合は随時改定届出の取扱にご注意ください。
年次有給休暇を4月1日からの一斉付与にしている事業所が多いことから、最近は年次有給休暇についての質問をいただくことが多いです。そのうちの一つが「パートタイマー従業員の所定労働日数が4月1日から変更になった場合、4月1日に付与する年次有給休暇は以前の所定労働日数・新たな所定労働日数どちらを基準に付与するのか」といった質問でした。まず前提として、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者には週所定労働日数に応じて年休を付与しなければなりません。そして、この所定労働日数は基準日において予定されている所定労働日数=質問の場合は4月1日における新たな所定労働時間に応じて付与することになります。年度の途中で所定労働日数が変更になった場合は、次の基準日まで付与日数を見直す必要はありません。 次に、年度の途中で所定労働時間が変更になった場合は、変更後の所定労働時間分を付与することになります。
最近、私用で色々な業種の営業担当の方とお話する機会があります。優劣をつけるのは失礼なのですが、「この方の仕事振りは見習いたいな。信頼できるな。」「この方のこういう点は改めてほしいな…」等々、色々と思いながらお話をしています。私が見習いたい、信頼できる営業担当の方は、連絡・対応が早く、進捗状況等を細目に知らせてくれます。そして「超能力者か?」と思うくらいにこちらの気持ちを読み解き、こちらがお願いする前に求めるものを提案してくれます。対して、ちょっと信頼できないな…という方は返事が遅く、こちらから状況確認の催促することがあります。また、お願いしたことのみしかされずその他の提案がないため、後になって「え?そういうプランがあるなら教えてほしかった…」といったことがあります。お願いしたことはしてくれており、特に問題はないので何も言いませんが…。次にまたその方にお願いしようという気持ちにはならないというのが本音です。人こそ人の鏡、私自身は顧客に対し、適切な提案が出来ているかな?迅速に対応ができているかな?と省みたりしています。
協会けんぽHPに、令和6年3月分(4月納付分)からの保険料率が公開されました。大分県の保険料率は健康保険は10.20%⇒10.25%、介護保険は1.82%⇒1.60%に変更になります。保険料率は、都道府県ごとの年齢構成・所得水準の差等を調整したうえで、当該都道府県の加入者1人当たりの医療費に基づいて算出されます。医療費の伸びを抑えることで、保険料率の伸びも抑えることに繋がります。平成30年からインセンティブ制度が導入され、加入者・事業主の取り組みに応じて「インセンティブ」を付与し、健康保険料率に反映されるようになりました。全47支部を順位付けし、上位15支部にインセンティブが付与されるのですが、大分県の総合順位は惜しくも16位だったためインセンティブは付与されていません。ご自身の健康のためにも、保険料率を抑えるためにも健診の受診や、日頃からの適度な運動や、バランスの良い食習慣を心掛けましょう。
令和6年度から施工管理技術検定の受検要件が緩和されます。まずは1級施工管理から説明を行います。従来は1級施工管理技士の受験には学歴に応じた実務経験が必要でした。これが、第一次検定の受験要件は試験実施年度末において19歳以上となり、実務経験は不要となりました。第二次検定の受験資格については、学歴に応じた卒業後の実務経験が必要でしたが、今後は1級第1次検定合格後または2級第二次検定合格後(1級第一次検定合格者に限る)の実務経験が必要となりました。2級施工管理については第一次検定はこれまで通り17歳以上から受検可能です。第二次検定の受験資格は従来の学歴毎の卒業後の実務経験から、2級一次検定合格後実務経験3年以上または1級一次検定合格後、実務経験1年以上となりました。実務経験の始期が卒業後から第一次検定合格後となったことから、現行の受検資格を満たしている方は、旧受検資格要件を選択した方が良いかもしれません。令和10年度までは経過措置期間俊、第二次検定は旧受験資格と新受験資格の選択が可能となっています。
賞与を支給した場合、賞与支払届を届け出る必要があります。これについては、保険料の控除・納付もあるのであまり漏れはないかと思います。忘れがちなのが、賞与を支払わなかった場合です。保険料の控除・支払が無いため、何もしなくて良いと考えている事業所もあるようです。新規適用時に賞与の支給予定月を届け出ている事業所には、支払予定月の前月に、年金機構から「賞与支払届」及び「賞与不支給報告書」が送付されています。支給が無かった場合には「賞与不支給報告書」の提出が必要です。また、育児休業等で保険料免除を受けている従業員に賞与を支払った場合、保険料は免除されるため控除・支払はありませんが、支給額の届出は必要です。漏れが無いか確認をしてみてください。