経団連と連合との間で今年の賃金引上げに係る交渉が始まりました。消費者物価上昇率の2%超えが常態化した昨今、賃金引上げは労働者の安定した生活の保護という側面からも重要となっています。人手不足倒産などという言葉が発信されています。中小企業では社員確保が深刻化する中で賃金引上げは最重要な手立ての1つであることに間違いありません。
会社経営では賃金は3つの側面から検討しなければなりません。第一に自社の支払い能力です。自社の支払い能力を超えた賃金水準は資金繰りを圧迫させます。第二に社員の生活保障です。安心して私生活が送れない賃金だと積極的に働くという姿勢が失われていきます。第三に業界内や地域内での賃金水準との比較です。他社の賃金が高いと社員は退職して他社へ移動してしまいます。基本的にこの3点を踏まえて賃金を考えることがとても重要なのです。
過去2年間、それまでの低い賃金上昇率から脱却し、3%後半や5%前半の賃金引上げ率となりました。ところで日本経済新聞等のメディアでは大手企業では初任給30万円超えのニュースも多くなってきました。大手企業と中小零細企業との賃金引上げ額・率で格差が拡大する傾向にあります。
この状況を一方的に×と決めつけることに違和感があります。私は政府(経済産業省・中小企業庁、公正取引委員会)が最近取り組んでいる事案に注目したいと思います。政府は親企業(大企業)が下請企業等からの受託(納入)価格引上げに積極的に応ずるように親企業に圧力をかけています。賃金や原材料価格の高騰で中小企業の原価は上昇傾向にあります。政府は中小企業の価格引上げ(交渉)要請に消極的な企業の企業名を政府は発表しました。公表企業にはよく知られた企業の名もありました。企業ブランドは傷ついたと思います。しかし下請会社等はもっと苦しんでいるのです。
こうした動きに拍車がかかれば、中小企業の収益構造が改善され、賃金引上げの原資が生まれてきます。企業規模の大小別を問わず、都市圏又は地方圏の別を問わず、法人又は個人の別を問わず、全ての企業で賃金引上げの大潮流が生まれれば、地域社会に活力が生まれてきます。今年の賃金引上げ交渉に注目です。