日本経済新聞の10月21日(月)付け朝刊に驚くべき記事が掲載されていました。見出しはこうです。[正社員、待遇下げ『平等』の衝撃][非正規との格差是正 最高裁が手当減額容認]。2019年以降、働き方改革が進められていく中で、正社員と非正規社員との間の賃金格差是正の動きが加速してきました。同一労働同一賃金の絶対命題のもと、正社員と非正規社員との間の賃金格差については均衡待遇又は均等待遇のいずれかで是正をしていかなくてはなりません。
この前提の下で各企業は非正規社員の賃金格差是正を図ってきました。問題はその是正のやり方です。一般的には正社員の基本給や手当は変更せずに、非正規社員の賃金・手当を引き上げる方向で対応します。しかし日本経済新聞の記事によれば正社員の諸手当を削減し、それを原資に非正規社員の手当等を引き上げる手法を、最高裁は法令違反ではないと結論づけたというのです。
私はこの記事を読んで激震が走りました。会社の総人件費額には上限があります。無尽蔵ではありません。増収増益で会社が支払える人件費総額が増えているのであれば全く問題ありません。しかし厳しい経営状態にある会社では総人件費額を簡単に増額することは困難です。そこで「貰いすぎている正社員の給料」を減らして非正規社員の賃金に回すというウルトラCを考えるのです。
これは危険技です。減額される正社員から猛反発を受けること確実です。労働契約法第10条において、就業規則(賃金規程)の変更は一定の枠組み(条件)の中でしか許されないと定められています。その条件とは「不利益の程度」「不利益変更の必要性」「内容の相当性」「従業員代表との協議の状況」等々です。最高裁が上告を受理しなかった理由はこれら4つの条件が正当に満たされていると判断したからでしょう。特に4番目の「従業員代表との協議の状況」が重要な鍵を握ります。
この新聞記事では正社員の賃金を減らす一方で、その資金を非正規社員の賃金UPに当てない方法での格差是正もOKという判決が出たとありました。東京地裁令和6年5月の判決です。こうなると経営者は自由放任に正社員の賃金カットができると勘違いしてしまいそうです。しかしこれをしてしまうと社員の離職を促すことになってしまうでしょう。
いずれにしても正規社員と非正規社員との賃金格差是正(均衡待遇又は均等待遇)の手法には色々な方法が採りうることを認識できた新聞記事でした。