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全都道府県で後期高齢者の医療保険料がアップ(25県では1割超も上昇)

 日本は国民皆年金・国民皆保険と社会福祉制度が充実しています。所定のルールに従えば、一定年齢からは額の多少はあるものの老齢等年金を受給できます。また私傷病に罹患して医療施設から治療等を受ける時の医療費も基本として3割負担で済むようになっています。これらは国民が支払う保険料によって賄われています。今回は75歳以上が加入する後期高齢者医療制度に関することを話題にしました。

 医療制度は会社員等給与所得者が被保険者となる健康保険と自営業者等が加入する国民健康保険制度とに大別できます。両者とも組合による制度代替が認められています。例えば大手企業等による健康保険組合や業種別個人事業主等が設立する国民健康保険組合などです。

 なお健康保険や国民健康保険の被保険者は満75歳に到達するとこれらの制度から離脱し、後期高齢者医療制度へ強制的に加入させられます。後期高齢者医療制度は各都道府県を一つの単位として運営します。各市町村単位だと高齢者率の差異が大きいことと都市部・郡部の市町村では財政力に大きな格差が生じてしまいます。その弊害を顕在化させない為に都道府県単位で制度を運営している訳です。
 3月29日付け日本経済新聞一面に【75歳以上の医療保険料 25県で1割超上昇(来月から)】という見出し記事がありました。47-25=22。「では22都道府県では保険料アップはないのだな?」と思ってしまいます。しかし記事は「全都道府県で上がる見通しだ」と本文で綴っています。今年の保険料比で10%超UPが25県あり、残り22都道府県では0%超10%以下の上昇率になるというのです。

 75歳以上の高齢者からは「年寄いじめをするな」とお𠮟りを受けそうです。後期高齢者医療制度の財政基盤は国庫負担5割、現役世代(75歳未満)4割、75歳以上後期高齢者が1割が原則です。総額の医療費が増加すれば負担率は同じでも増加する仕組みです。

 総額医療費は増加基調です。75歳以上の後期高齢者が数的に増えています。長寿化も貢献しています。長寿化は高度な医療が平均的に受けられる充実した社会福祉制度の反映でもあります。その為に総額医療費が増えていくというのは少々歯がゆい気持ちがありますよね。

 後期高齢者医療制度はこのままで良いのでしょうか。長寿者が多いことは良いことではあるのですが、必要ない医療が施されているという批判もあります。総額医療費を維持又は減額させていくという公益を考える時期になっているかもしれません。

 また人口1410万人の東京都と人口54万人の鳥取県とで同じように医療制度が運営できるとは思えません。以前議論されていた道州制のように、一定数の都道府県を取りまとめた上で、「拡大版後期高齢者医療広域連合」を組織化する必要性が近づいているような気がします。