日本の小売業界は2大流通グループが牽引しています。一つはCVSの雄、セブン・イレブンを率いるセブン&アイグループです。もう一つはGMSのイオンリテールを中核とするイオングループです。売上高と利益はセブン&アイがイオンを大きくリードしています。セブンイレブンの元親会社であった米国のセブンイレブンを傘下に収めているからです。
小売業の発展から衰退までの理論として「小売りの輪」理論があります。高校時代に難儀であった偏差値をイメージしてみましょう。偏差値50を頂点に左右になだらかに線が下っています。富士山を想定すると分かり易いです。この図表を正規分布と呼びます。小売業の盛衰をこの正規分布に落とし込んでみましょう。
正規分布の左側、特に際立って左に販売価格が低いゾーンの市場が存在します。ディスカウント業態がここに位置付けされます。正規分布の右側は高価格帯のゾーンです。昔だったら百貨店、今の時代だと高級路線を崩さないブランドショップでしょうか。小売市場に参入する新規参入者は低価格帯ゾーンから入ってくることが一般的です。知名度が低いのですから、市場開拓に成功するかは「先ずは買ってもらう」ことから始めます。「安かろう、悪かろう」でも市場から受け入れられれば、成長の原資である利益(現金)を獲得することができます。
しかし低価格路線で市場参入した企業も事業規模が大きくなるにしろ、本社費等の固定費が売上成長率以上に伸長してしまい、低価格路線を維持できなくなります。正規分布の中央へと移動してしまうのです。そうすると、正規分布の左側である低価格市場に空白が生まれます。新たに生まれた市場の空白を埋めようと新規の参入者がまた現れるというのです。これが「小売りの輪」理論です。
先に挙げた2大流通グループも企業規模が大きくなり過ぎました。セブン&アイは昨年11月にすったもんだの挙句、西武・そごうの百貨店事業を売却しました。投資家グループからは元親会社であったイトーヨーカ堂を切り離せと圧力がかかっているようです。その結果か分かりませんが、ヨーカ堂の北海道・東北等にある17店舗を他社に売却する等して撤退すると発表しました。
地方圏にある店舗を撤退・廃止すると同時に、首都圏等都市部に集中するという戦略を取ったようです。経営資源の選択と集中は絶対に必要です。しかし集中するということは、追加・新規の設備投資等を行うということです。今回の撤退・譲渡等が単に店舗を減らすというのであれば、次の成長を期待することはできません。この戦略が成功するのか否か、数年後に結果が見えてくるでしょう。