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政労使会議で岸田首相が「昨年以上の賃金引上げ率を期待する」の発言に思う

 昨夜のTVを観ていたら、政労使の会議で岸田首相が「昨年実績よりも高い賃金引上げをお願いしたい」旨の発言があったと報じていました。経団連トップの十倉雅和会長は、中小企業も賃金引上げをと強い期待感を示していました。経団連は大企業クラブですので、中小企業の賃金引上げまで言及するのは日本商工会議所の領域を犯している感じもしないではありません(笑)。

 令和5年の平均賃金引上げ率は3.5%強いでした。これを上回る目標となれば、政府が考える賃上げ率は3.6%以上となりそうです。この賃金引上げ率目標は「高い」のか「妥当」なのか、いや「低すぎる」のか一考すべき問題です。なお賃金引上げは、「①社員の生活費補填」「②会社の支払い能力」「③地域の他社・他業界の状況」の3つの観点から考えなければなりません。

 「②会社の支払い能力」の視点では、「経営状況が厳しくして賃金引上げの原資がない」と恨み節の経営者もいることでしょう。しかし「①社員の生活費補填」すらできないのでは、良い人財は採用できませんし、また退職者が続出するという事態を招きかねません。そこで「③地域の他社・他業界の状況」に強い関心が及ぶことになります。

 厳しい経営状況でも賃金引上げをすることで、マクロ経済的には地域いや日本経済は絶対に上向きます。賃金引上げは需要の拡大に繋がります。日本は極めて低い賃金引上げが続きました。その一方で物価上昇が抑制されデフレ状態も続きました。低い賃金引上げ率が物価上昇率(下落率)をちょっぴり上回っていたのです。しかしこの不等式はここ2~3年で完全に崩れてしまいました。

 超円安による輸入物価の高騰により2年弱も消費者物価の上昇率は2%を超えています。その結果実質賃金が目減りしています。先進各国では実質賃金が目減りしていのは、日本だけという異常状態です。私は「物価上昇率を大きく上回る賃金引上げ率を」と主張しているのではありません。

 ここ数年の購買力の低下をカバーできるだけの賃金引上げが必要です。そして将来的にも「賃金は確実に上がっていくものだ」という意識を、労働者だけではなく経営者サイドにも醸成してほしいものです。そうすることによって、拡大する市場に対応する為に積極的な設備投資を行う、という局面も出てくることでしょう。今年の賃金引上げ率に注目です。