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フリーランスにも労災保険適用へ、270万人が該当と推定

 学業を終えた人はどのような人生を送るのでしょうか? 全員が同じとは限りません。ある人は会社勤めをし、別の人は自営業を営み、また仕事と私生活バランスを取ったフリーランス的な働き方をするかもしれません。その外に働くことをせずに、親や先祖たちの遺産を受け継いで気ままな人生を過ごす人もいるかもしれません。しかし大半は「働く!」ことを選択します。働く方が異なるだけです。

 会社員など給与をもらう人達は使用者との間で雇用契約を締結します。不幸にして仕事中に災害に遭ったとすると、被災者は国が管轄する労災保険によって補償されます。この労災保険制度があることによって労働者は安心して仕事ができると言っても過言ではありません。労災保険料は全て使用者が支払います。従業員にとっては本当に有難い制度です。

 労災保険制度では一定のルールに基づき、経営者や一人親方も特別加入することができます。特別加入することで、従業員同様に労災事故に遭ったときは補償されるのです。最近では業務委託等フリーランスと呼ばれる人々が増えてきました。国の統計によればその数は460万人に達すると言います。

 フリーランスの人達が仕事をしているときに事故に遭ったときはどうなるのでしょうか? 受託元との法的関係は雇用契約ではありませんので、労災保険が適用されません。治療費は健康保険制度により3割は自己負担です。休業したからと言って補償もありません。後遺症が残っても基礎年金等の障害年金で担保される障害以外は補償がないのです。

 過日に興味深い事案がありました。アマゾンの配達を請け負っていた人が配達中に事故に遭ったのですが、諸般の事業を考慮して労働基準監督署長が労災認定しました。このように国はフリーランスにも労災保険の適用を推進しようとしていることが伺えました。

 時代的背景を受けて、厚労省はフリーランスにも労災保険の対象とすることを決定したようです。2024年(令和6年)秋にも法改正の上で施行する予定です。対象は270万人になると予想しています。方法論としては特別加入制度を活用するようです。業界団体等が設立した特別加入団体にフリーランスが個別に加入するというやり方です。

 この特別加入という方法では保険料は自己負担です。民間保険会社の保険料より安いとしても自己負担が発生します。既に自動車運送業、建設事業、廃棄物事業など25業種で個人事業主の特別加入が認められています。これら既存事業との調整から、一人親方特別加入制度を活用せざるを得ないのでしょう。労災保険法等の法整備がどのように進められていくのか注意していきたいと思います。