今日の日本経済新聞朝刊に【ビジュアルでわかる--バート「年収の壁」いつまで】という見出し記事が17面に掲載されていました。日本社会は少子高齢化が超急速に進み、あわせて円安傾向の強まりを受けて経済規模が急速に萎んできています。経済活動は「資本(設備)」と「人(働き手)」の2大生産資産によって説明できます。これに全要素生産性とを組み合わせると3大要因を軸にカンフル剤を打てばよいことになります。
ここでは資本と全要素生産性を除き、ひとに絞って検討してみましよう。「働き手が増える」や「労働時間数が増える」のであれば経済規模を維持できる可能性が高まります。既婚又は未婚の別を問わず、15歳以上64歳以下の労働力人口は減少の一途をたどっています。労働力人口といっても、実際は就学や介護等諸般の事情により、実際は就労していない人達も相当な割合います。その非就労人口として分母の大きいものの一つに専業主婦(主夫)の存在があります。家庭におさまって仕事をしていないのです。専業主婦(主夫)という言葉自体が高度成長時代の遺産といえそうです。
一方で主婦(主夫)でありながらも、主たる生計者(通常は夫)の収入が伸びない中、パートとして働きに出ている人達もいます。社会保険制度からは、主たる生計者の収入の1/2未満でかつ130万円未満であれば、基礎年金や健康保険の保険料を掛けなくても夫の制度に組み込まれるという特典があります。よってパート収入を130万円未満に抑えようという圧力がかかります。
この社会保険制度は度々変更されてきました。直近では昨年10月からは社会保険被保険者数が100人超の企業に勤めているパートは、年収が106万円(88千円/月)を超えると強制的に社会保険に加入することとなりました。この人数規制は2024年10月には50人へと繰下げられます。
パート収入から社会保険料が徴収されると手取り収入は大きく目減りします。一般的に手取り額が従前に戻るには125万円から130万円位の収入を得なければならないようです。これに加えて主たる生計者の企業で家族手当の支給があるときは、その手当の支給がカットされる可能性もあります。更に年収が150万円を超すと所得税法上の配偶者特別控除が順次削減されていきます。パートとして持つと働きたいと強い意思をもっていても、社会保険制度や税法の特典がなくなり、また主たる生計者の企業からも受けている金員の支給がなくなれば「もつと働きたい」という気力き減衰します。
政府は働く人を増やそうと躍起になっています。日本経済と経済の活力の維持のためには働き手を増やすことが最重要な政策課題と言えそうです。にも拘わらず、昭和の時代に完成した諸制度の抜本的見直しはせずに、小手先の改善策に注力しています。例えば、106万円の壁を越えたパートの社会保険料を雇用保険制度の中から補填しようという仕組みを政府は考えているようですが、まさに小手先の対応策ではないでしょうか。当該のパートさんは雇用保険料を支払っていません。正社員として働いている女性が納付する雇用保険料を転用するのです。きちんと納付している正社員女性の気持ちは穏やかではないでしょう。
英国も一定の収入を超えると社会保険料がかかるという制度は日本と同じですが、英国では超えた金額に対してのみ保険料がかかるようです。日本は106万円を超えると超えた分ではなく、全額に保険料負担がかかるのです。他国の実例をよく調査し、その事実を国民全員に正しく知らせてほしいものです。その努力が政府にないことがとても残念に思います。