世界における日本経済の凋落には心が痛みます。今年の賃金引上げ率が例年になく高く推移しているようです。それでも前日銀総裁黒田東彦氏の弁によれば、目標インフレ率2%が未達として金融緩和政策を継続してきました。植田日銀がこの金融政策を維持すれば、為替相場は130円前半を中心に値動きし円安傾向はまだ続きそうです。副作用によって市民は消費者物価の上昇に悩まされ、貿易赤字が拡大して国富が国外へ流出し続けることでしょう。本当に気が滅入ってしまいます。
賃金の引上げに話しを戻します。今年の引上げ率は5%を基準とした攻防になると思っていましたが、現実にはもう少し低いようです。驚いたことに銀行業界では数年に亘って同額であった初任給を引き上げたという報道もありました。数年間も初任給が同じ!という事実を知ってびっくりです。これでは優秀な人財を確保することはできません。政府は国際的に問題となっている技能実習制度の改定を目論んでいます。円安で実質賃金が目減りした日本から、東南アジア中心の外国人労働者が離れていっているというのです。
単純労働者は勿論のこと、高度な知識・技能を持った外国人が日本に見向きしなくなったという事実。そしてまた日本人でも海外で稼ごうと賃金が高い外国で働くことを選択する人達が増えています。労働力不足に拍車がかかっています。もっと賃金を上げましょうよ!!!
政府は労働力移動を活発化させようと対策を考えているようです。その中で注目すべき事案を2件取り上げます。①失業時に受給する基本手当の給付制限期間の短縮、②雇用調整助成金等を活用した学び直し、の2点です。
①に関してです。自己都合で退職すると7日間の待機期間に加え、2か月間の給付制限期間が設けられます。順調にいっても基本手当を貰うまでに2か月と1週間はかかります。その間に収入がないとすれば、退職を中止する人もいることでしょう。これを避けるために、政府は給付制限期間2か月をなくすそうと動き始めました。労働力移動が活発化すると、「退職されかねない企業」と「転職させようという企業」共に賃金引上げレースが始まるように思われます。
②に関してです。全地球的に技術・サービスなどあらゆるものが急変している中、「古い知識で仕事をしています」では早晩会社は行き詰まります。在職中に新しい知識や技術、スキルを習得させて、日常の仕事にフィードバックさせていくことが肝要です。企業が社員の学び直しを行うとすると資金が必要です。政府は雇用保険の制度を活用して企業を支援しようとしています。
国際社会における日本の経済、外交、科学技術、軍事等々のプレゼンスはドンドン下位に向かって下落中です。政府が考えている労働市場活性化策が早く実現され、日本が復活できることを大いに期待したいものです。