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最低賃金、現行4区分から3区分へ再編。その意図はどこにあるのだろうか?

 今回も最低賃金に関するものです。中央最低賃金審議会が4月6日、全国47都道府県を4つに区分して引上げ額の目安を答申していたルールを見直しました。現行の区分割は4段階ですが、それを3段階にしようというのです。大分県は現行制度では最低のD区分です。改定後でも最低の新C区分となっており、変更による影響は薄いと予想されます。

 47都道府県のうち、現行4区分ではAが6、Bが11、Cが14、Dが16となっています。改定予定の3区分ではAは6で変更なし。Bは28、Cは13となるようです。なぜ厚労省は区分割を4から3つへと1区分削減しようと考えたのでしょうか。私が思うのに「全国平均961円の最低賃金額を今年中に1000円に引き上げる為の裏技的要素が高い」のではないでしょうか。この考えを単純化した計算式で証明してみましょう。

 全国平均は47都道府県の加重平均で算出されています。分母は総労働者数で分子は総最低賃金額です。現行の最低賃金の代表的な数値をリストアップしてみます。Aを1072円、Bを968円、Cを920円、Dを853円とおきます。単純化するために都道府県の数を労働者数とします。計算してみると現行ルールでは928円となります。分子は[1072円×6+968円×11+920円×14+853円×16]の43608円となり、分母の47で除すると928円となるのです。

 次に3区分のときはどうなるでしょうか。新A区分と新C区分の最低賃金は1072円と853円で問題ないでしょう。問題は新B区分です。新B区分の最低賃金を968円又は920円の何れにおくべきでしょうか。中央最低賃金審議会の委員諸氏はどのように考えるでしょうか??? 私は現行のB(968円)とC(920円)の平均値である941円を新B区分の最低賃金と想定しました。[968円×11+920円×14]の合計23528円を25(11+14)で除すると941円となります。

 こうして新規適用される3区分で平均値を計算すると933円という値が得られました。新Aの合計は6432円(1072円×6)で変更ありません。新Bは26351円(941円×28)、新Cは11089円(853円×13)となります。総合計は43872円となり47で除した平均値は933円となるのです。何ということでしょう! マジックにかかったようです。区分を4つから3つに変更した途端に平均値が5円(0.6%)アップしたのです。

 新聞報道によれば2002年から2022年の20年間で、最低賃金の最高値と最低値の格差が104円から219円へと倍増したようです。最高値は両年ともに東京都で708円から1072円へ364円(51.4%)の増額です。最低値は604円から853円で249円(41.2%)の増額となっています。世界との経済競争で戦っていくには東京都の最低賃金を引き上げていかなくてはならないとしても、大都市圏と地方圏での賃金格差が拡大すれば、若年労働者は大都市圏へと流出することは自然の流れです。

 このように整理していくと、今回の最低賃金4区分を3区分に縮小するという方針は、政府が打ち出している今年中に最低賃金全国平均1000円到達を目指す上での超裏技ではないかと勘繰ってしまいます。読者の皆さん方はどのように感じられますか???