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プライム市場上場企業のうち約16%がPBR1倍未満という衝撃な事実

 東京証券市場では昨年4月に市場再編があり、プライム、スタンダード、グロースの3市場に再編成されました。再編成前の1部上場企業数は2177社でした。再編後のプライム上場企業数は1839社と再編前と比較して15.5%の減少です。しかし上場基準に適合しないものの3年間の以降猶予期間をもらった企業数は295社あります。よって実質的にプライム市場の上場基準を満たしている企業数は1544社(1部上場比△29%)なのです。「3年以内に基準満たせばOK」という緩やかなルールを東証が定めたのが、なんとも日本らしいというところでしょうか。

 1月31日付日本経済新聞朝刊に【一目均衡】に興味深い記事がありました。編集委員川崎健氏の署名があります。プライム市場に上場している企業の中で、PBRが1倍を切っている企業が時価総額1000億円以上で292社あるというのです。292社は全上場数1839社比で15.9%になります。その企業数の多さにびっくりです。なお時価総額1兆円以上の会社でも47社あるというのです。

 上場基準のうち流通株式基準が3つある中で、流通株式時価総額は100億円以上、流通株式比率は35%以上となっています。単純計算で流通株式基準は時価総額が286億円(100億円÷0.35)がプライム市場の下限となります。よって286億円から1000億円未満にある企業でもPBR1倍未満の会社もある可能性が高いと思われます。プライム市場全体では292社+αの会社数がPBR1倍を下回っているということです。この事実は驚きというよりは、経営者は経営者の仕事をしていないと私は思ったのです。

 ところでPBRとは何でしょうか。PBRとは株価純資産倍率のことです。分子が株価、分母が純資産です。この値が1倍を下回るということは、市場つまり投資家が「この会社は純資産以上の未来価値を見出せない」ということを暗に示唆しています。一株当たりの株価が1万円だとすると、一株あたりの純資産が1万円超あるということです。その会社は事業をやるよりも会社を畳んで純資産を株主に配当した方が、株主の取り分が多くなるのです。投資家がプライム市場で株価の売買して利益を獲得するよりも、直ちに事業を止めて清算による配当を受けた方が受取金額が多くなるのです。これは事業をやる価値がないということなのです。経営者は大いに反省しなければなりません。

 何故こんなことになってしまうのでしょう。上場企業の経営者は現預金をせっせとため込んで、設備投資を行ってこなかったのです。その膿がどっと出てきています。その膿とは世界経済における日本の地位の下落です。この記事に着目した人はいるでしょうか。投資家はいたかもしれません。私はこの記事は暗に「積極的に設備投資をして企業価値を高めていこうではないか」と怠慢な経営者に言っているように思えてなりません。