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リカレントとリスキリング、二つの学び直し。北欧デンマークの労働政策、職業訓練の手法を学ぼう。

 政府は経済政策の1つとしてリスキリングの支援策を打ち出しています。リスキリングとは学び直しという意味です。学び直しではリカレントという言葉もあります。リカレントとリスキリングの違いはどこにあるのでしょうか。数年前にリカレントという言葉が登場し、現在ではリスキリングという言葉が優勢となっています。共に”学び直し”という意味では同じだと思うのですが...。

 英語で考えてみると少し理解が進みます。「リ」は「RE」です。資源関連でリユース(再利用)やリサイクル(循環)というように、「RE」には「再び」「回る」というような意味があります。

 次にリスキリングの英語表記を考えてみます。リスキリングは「reskilling」です。「skill」は「スキル」として常用されています。技術、ノウハウ、能力といった類のものがスキルですよね、このスキルを「再び」ing(リング)するのです。「リング」は現在進行形ですから、リスキリングは労働能力等を再び学び直し、時世に合ったあたった形でバージョンアップしていくという意味のようです。

 一方のリカレントの英語表記は「recurrent」です。「current」とは「現在の」「最近の」という意味です。リカレント教育といった使用法では、「大学や大学院等に戻って学ぶ」という用法が多く用いられています。大学等卒業時点で身に着けた旧い知識・学識や経験値のままでは、現在の職業能力の維持すらも難しいという意味が込められているのでしょう。

 ということで、リスキリングとリカレントの違いをまとめてみると次のようになります。リスキリングは、現場等での仕事能力(スキル)を高める為の再教育・再訓練であると定義付けできます。リカレントは、現在の最新な知識や科学技術等を高等教育機関に再入学等で学び直し、それを第2・第3の職業人生で活かそうというものです。リスキリングが現場職業能力UPに直結し、リカレントが長期的な視点にたった知識習得や先見力を磨こうという意味合いがあります。

 日本経済新聞12月6日付朝刊一面に[デンマーク、元祖学び直しの底力][古いままが最も怖い]という記事が掲載されていました。読まれた人も多いと思います。記事の要約はこうです。①デンマークは人口600万人弱の小国。②1960年代から職業訓練に注力してきたが94年以降に本格化。理由は10%前後の高い失業率にあった。③職業訓練のコースは3000種類で全て無料。④労働政策への公的支出は2019年はGDPの2.8%で日本の9倍。職業訓練だけだと日本はGDPの0.01%だが、デンマークは0.36%。

 日本経済の底力が長期低落傾向にあります。反転させるには労働生産性を高めなければなりません。個々人の労働力を高めていくには、1人の労働者(や企業)の自助努力だけば限界です。デンマークのように、国策として全面的な支援策を打ちあげるべきでしょう。労働生産性が高まり、競争力が高まれば企業の収益力が上がります。税収が増え、少子高齢化等の社会問題の解決にも寄与できます。そして、働く人全ての幸福感が上昇していくことは確実です。日本国は労働教育に本腰を上げてもらいたいのです。