日本経済新聞11月8日付に面白い記事が掲載されていました。[「棚ぼた課税」は愚策か』という見出しで、日本経済新聞社コメンテーターの西村博之氏が論陣をはっていました。西村氏の提言の要旨は、資源高や為替相場にて超過利得を得た企業に対して課税をすべきではないかというものです。
西村氏は欧州諸国でこのような課税制度が運用されている事実を語っています。スペインの例だと、国営の短距離線の鉄道の旅が無料だとか。その費用は1兆円を見込み、財源は想定外の利益を得たエネルギー会社や銀行への課税、超過利得税だというのです。このような課税制度はスペインだけではなく、イギリスやイタリア、ギリシャ、ハンガリー、ルーマニアでも導入されているようです。欧州の盟主、ドイツも導入を検討しているといいます。
企業が事業を通じて獲得する利益には大きく2つあるようです。「努力で得た利益」と「幸運による利益」の2つです。前者の利益は経営努力が報われた結果ですから、超過課税を課すのは問題がありそうです。しかし後者であれば、自社の努力の成果でない牡丹餅的な利益です。予想外の利益だと言えます。今日の新聞報道によれば、今事業年度の中間期における上場企業の利益は、1/4の会社で過去最高益だったそうです。その一方で赤字や減益の会社も40%ほどあるとか。上場企業全体では増益となっています。
年初来から30円強の円安になったことで輸出割合が高い企業では、予想外の利益押上げ効果が得られています。鉱物資源等を取り扱う商社の利益も最高水準を示しています。円安が利益を押し上げているかいなかは有価証券報告書等の公開資料を観れば一目瞭然です。一方で、内需型企業では円安による仕入価格高騰により減益や赤字転落となっています。円安で望外の利益を得ている企業へ、超過利得課税を課すことは国民の合意が得られると思うのてすが、如何でしょうか。
超過利得課税を実施すると企業の設備投資意欲を落としかねないという反論もあります。しかし労働分配率が長期低落傾向を示しているように、現預金としてしっかりと貯め込み、生産性向上やDX対応等の積極的かつ長期的な設備投資をしてこなった企業も多いのです。これまで設備投資をしてこなったのに、超過利時課税では投資意欲をそぐと主張できるのでしょうか。二枚舌を使った詭弁としかいいようがありません。
岸田政権は円安対策として大型経済政策を打ち出しています。その財源は国債発行です。私は超過利得課税を導入して、円安で潤う企業に応分の負担を求めるべきではないかと思うのです。