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円安が進み1ドル150円台も。進む日本の貧国化

 円安に歯止めがかかりません。バイデン米国大統領はドル高を容認する発言をしています。ユーロ圏の中央銀行ECBも利上げに前向きです。主要通貨の中で円のみが「安くなっています」。政府は口先だけの介入ですませ、日銀は緩和政策の変更に無関心なようです。円安は政府と日銀の政策が誤っていることの証左といえそうです。

 黒田日銀総裁は消費者物価指数が2%後半になっている事実に対し、ロシアのウクライナ侵攻等地政学リスク等を理由に、「CPI上昇率が2%を安定的に達成したと言えない」として、緩和政策を変更する兆しすら見せません。本稿ではこのCPIについて考察してみましょう。

 CPIは食料品等季節変動要因により上下変動する指標も確かにあります。その一方で季節変動に捉われず、需要と供給等経済原則に基づいて上下変動するものもあります。CPI指標ではこの需給変動との相関性が高いものをコアCPIと呼んでおり、CPIの中ではこのコアCPIの比重がかなり高そうです。日銀が「CPIは確実に2%を超えて上昇する基調ではない」と主張する背景に、コアCPIが低い上昇率にあるという事実があります。しかし最近のデータではこのコアCPIも2%前半の上昇率を示しているようです。

 消費者物価と共に企業物価(企業購買者物価)の動きも注目です。海外からの輸入価格が上昇していることから、企業物価指数は消費者物価より早く昨年後半から上昇し始めていました。一時は10%弱まで上がっていました。企業物価の上昇は理論的には消費者物価の上昇を招くはずです。にも拘わらずコアCPIが上昇していない理由の一つは、「価格を引き上げると客離れが進む」という恐れを企業が抱いてることに他なりません。

 その結果、原材料等の上昇は企業内部で解決しようと必死の経営努力をしているのです。それが行き着くところは、利益の減少です。そしてまた賃金の抑制に他なりません。黒田日銀が主張しているのは、企業物価の上昇分は利益を減らしてでも、また賃金を抑制してでも消費者物価に反映させるなということと同じことです。

 企業が賃金を抑制すれば、購買力が低下します。購買力の低下は市場縮小を招きます。残念ながら企業は安価販売を強化します。そして利益が減少していきます。このように考えて行くと、金融緩和政策の維持は、中長期的には日本経済の体力消耗と国民の冨の海外流出へと繋がっているのです。来年春には任期を終える黒田総裁には、このような日本国の貧国化は関係ないのでしょう。今が良ければ良しなのでしょう。ただため息が漏れるだけです。