米国の金利が上昇しています。中央銀行のFRBが毎回の会合で最大0.75%もの利上げを続けています。引下げへ転じる可能性は政策金利4%到達が目安だろうと市場では囁かれています。このような継続的な金利引上げの要因は、米国内で8%前後の高い物価上昇が続いていることにあります。各国の中央銀行は物価の番人を自認していますので、物価上昇に最大限の警戒心をもっています。
物価上昇が続けば、賃金で生活している人々にとっては実質賃金の目減りとなり、生活苦が目の前に迫ってきます。対策は二つあります。会社に賃金の引上げを要求するか、又は副業等を始めて収入の口数を増やすかです。いや第三の選択肢もありそうです。高い賃金を支払っている会社への転職です。
10月3日の日経MJに[アマゾン物流従業員、平均初任給が時給2740円に]という見出し記事がありました。アマゾンといえば、世界最大級のネット企業ですが、物流を担っている従業員の賃金が低すぎると米国内でも糾弾されていました。そのアマゾンが人員確保のために、2021年9月に15ドルの初任給を18ドルに引き上げていました。20%という高い引上げ率です。そのアマゾンが2022年10月から更に1ドル引き上げて19ドルにするというのです。平均で6%の引上げ率だそうです。
「企業は人なり」ですから、従業員がいなければ事業活動はできません。従業員あっての事業活動なのです。物価高で苦しむ従業員への対応を誤れば、転職による離職者が増えるかもしれません。そのリスクを2年間で4ドル、26%の賃金引上げでアマゾンは応えたのです。
10月5日から大分県の最低賃金が32円引き上げられて854円になります。全国平均では961円となります。低い賃金で有名だったアマゾンの2740円と比較して、△1779円、35%の水準であることに驚きを隠せません。円安で割り引いても日米格差に愕然です。
賃金は企業会計では人件費として把握され、コストとして認識されます。しかし、人材を人財や人剤という観点で捉えれば、人件費はコストではなく投資と考え、そして無形財産として考えるべきなのです。
「人件費を上げたくない」という経営者はその地位を他者に譲るべきです。「企業はひとなり」という格言を今一度かみしめて欲しいものです。そして、人への投資を積極的に推し進め、同業他社とどんぐりの背比べをするのではなく、1つ飛びぬけた会社として社会や求職者の注目を浴びてほしいものです。