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最低賃金30円UPでは“ゆでガエル”現象から脱却できない!

 今年の最低賃金の引上げ額について話題に上ってきました。全国平均では930円が現時点での最低賃金です。政府はこれを1000円にすることを当面の目標として掲げています。公に主張はしていないものの、公然の事実として「いつまでに1000円にするのか」という年度だけの問題となっています。

 中央最低賃金審議会では、この930円を今年は30円引上げしようという動きでほぼ固まったようです。30円の引上げ率は3.2%です。労働者側からは「低い」という声が、また経営者側から「これは高すぎる」という主張がなされるかもしれません。中立的な公益委員はどのような判断を下すのでしょうか。最近の食品物価等の上昇もある意味では考慮にいれるかもしれませんね。実質賃金の目減りは防ぎたいところでしょう。

 お隣の韓国は今年1月に5%の引上げを決定しました。引上げ後の時間給は9160ウオンです。対円の現在の為替は0.1005ウオンですので、911.44円となります。私が今春に日本経済新聞でみた見出しは1000円超とありました。為替は日々刻々と変わっていくので、今春以降ウオン安が続いているのでしょう。邦貨に転換した価額は下落しています。

 ここで韓国の最近の引上げ率を推移をみてみましょう。革新系の文政権から保守系の尹政権へと今年5月に政権交替がありました。先ほどの9160ウオンの最低賃金は文政権下での決定事項です。文政権下5年間の引上げ率は次のとおりです。2018年16.4%(前年は6470ウオン)、19年10.9%、20年2.87%、21年1.5、そして22年は5.1%。この5年間での伸び率は41.58%(9160÷6470)と突出しています。

 次に日本の最低賃金の伸び率をみてみましょう。2017年(平成29年)は848円でした。今年、仮に30円UPしたと予想すれば最低賃金は960円となります。この5年間の伸び率は13.21%(960÷848)です。韓国の41.58%と比較すると極めて緩やかな上昇だと分かります。複利計算だと日本は年平均3.50%、韓国は5.58%です。

 韓国のように上昇率が際立って高いと経営者はどのような経営判断をするのでしょうか。1つとして「事業を閉鎖する」という選択があるでしょう。また「従業員を解雇し経営者の自助努力で不足する労働者分を補う」という苦肉の策もあるかも知れません。そして「従業員を減らしIT化、DX化を一挙に進めてビジネスモデルの大転換を計る」という選択も浮かび上がってきます。労働組合が強い韓国。先鋭的に組合に物申されるよりは、IT化、DX化を超特急で進める方が、同じ苦労をするのであれば得策と考えても不思議はありません。

 ここからは中小零細企業の経営者には激しい反発されることを承知の上で、最低賃金の引上げ額を70円引き上げることを提案したいと思います。どんなにあがいても最低賃金は2年又は3年先には絶対に1000円になります。これは確実です。漸次的変化はゆでガエル現象を発生させます。いや既に日本経済はゆでガエルとなっていることに気が付かないといけません。

 物価は確実に上昇します。後手後手の対策で右往左往するのではなく、ゆでガエルを飛び上がさせるほどの熱量(刺激)を与える必要があるのです。その熱量(刺激)をどう緩和させていくか、その熟考と実行が経営者に求められていると思うのです。勿論、政府や霞が関に良薬という処方箋を出してもらいます。国会も与野党の別なく、日本国をゆでガエルから脱出する方法を真剣に議論をしてもらわないといけません。国会議員たちには報酬泥棒と呼ばれないようにしてほしいです。