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副業の新しい形!? 社内に第2の勤務先

 副業に関して不可思議な情報を入手しました。情報の入手先は日本経済新聞の記事です。6月7日付朝刊に[社内に第2の勤務先]の見出し本文がありました。これは”迫真:副業2.0▶2”という連載記事です。

 社会保険労務士である私は、「副業を許可していいものか」と顧問先から相談を受けることがあります。場合によりけりですが、「原則として禁止としつつも、就業規則に副業に係るルールを設けましょう」と助言します。そして「そのルールに基づき所定の様式による許可申請を提出させてください」とフォローします。許可申請書には、①就労場所、②就労時間、③業務の内容、④本業(会社の仕事)に与える影響度等を記載してもらいます。

 この許可申請書の内容に基づいて会社は許可の可否を判断します。副業は本業があってからですから、本業に影響を与えてはいけません。過重な労働になると本業の生産性や集中力が低下する可能性があります。「休みのときに副業をするから本来は自由だ」との主張も出てきそうです。

 しかし本業と副業とで心身に負担となる総労働時間となるときは、数か月後に心身の不調を訴え始めるかもしれません。長時間労働による心身不調や疾病罹患等を防止するために、国は労働基準法改正により時間外労働規制を強化しました。端的には一か月間の時間外労働は100時間を超えてはならないのです。

 本業である会社にはこの規制がかけられているにも関わらず、副業に従事する時間数が100時間を超えたらどうなるのでしょうか? 原理原則で言えば、副業をしている他の会社の責任追及が発生するでしょう。本業との合計労働時間の把握義務が当然に発生するからです。

 さて本稿の最初に書いた私の驚きは次のとおりです。[社内に第2の勤務先]とは、同じ会社に勤めながらも、ある仕事を行うときは業務委託契約を交わして外注業者として仕事を処理するという内容なのです。この記事によればソフトバンクが令和3年2月に、東京海上日動火災は令和2年9月に社内副業を始めたとあります。

 大手企業では複数の部署があり、希望する部署以外で仕方なく勤務することもあるでしょう。もしその部署が必要な人財を特にIT人財を多数必要とする場合、人事異動でその部署に着任するというよりは、特定プロジェクトのみ応援して欲しいということもあるでしょう。社内異動や社外からの募集採用だと人件費が増加し、固定費化してしまいます。プロジェクト期間中だけ必要な能力を調達したいとき、社内の別の部署で働く人財の能力を借りるというスタンスも納得できます。

 この社内副業は難しい問題も抱えているようです。①本業との合計で労働時間が過重にならないか、②業務委託契約の締結をどうするか、③社内副業に熱が入り本業が疎かにならないか、④社内副業に対する対価や支払いをどうするか、⑤副業時間としてどの程度を認めるか、⑥どの場所で社内副業をさせるか、⑦社内副業をしない他の社員との調整をどうするか等々です。

 日本経済新聞はこの記事の最後に、専門家の意見を掲載しています。社内副業は労務管理の煩雑さなどの課題はあるものの、「人材や技術の流出保防ぎたい企業と自律的なキャリアを形成したい社員の双方のニーズを満たす仕組みだ」。