「負けるが勝ち」という言い伝えがあります。交渉相手に対して一方的に勝つ!と相手は恨みます。負け!に対して遺恨を持つようになります。高校時代に漢文を習いましたが、”臥薪嘗胆”という4語熟語の意味を知りました。古代中国での強い2国間の争いの話です。負けた相手の後継者は「痛い薪(たきぎ)の上で寝て負けた恨みを忘れず、また苦い肝(きも)を嘗めて復讐への決意を強めた」のです。
一方的に相手を痛めつけるのは通常の商取引でも避けたいものです。負けた(負けようとしている)相手は必至の形相で戦いを挑んできます。正に「窮鼠猫を噛む」の世界です。勝者は勝つことは確かでしょうが、無用な手傷を負うことにもなりかねません。実際のドンパチがなくても、相手が自らの意思で白旗を上げるような状況を作ることが上手な戦い方でしょう。上手な戦い方はBC450年頃に発刊されたとする”孫子(の兵法)”でも語られています。
孫子と対極的な考え方は1800年初頭にプロシアの将軍グラウゼヴィツが世に問うた”戦争論”です。彼は戦いは私闘の延長線だと言い、相手より物量や質量で優位に立つことが重要と指摘しています。その為に実際の戦争(とその準備段階)では、常に相手より優位に立とうと軍備の拡大を志向することになります。孫子と戦争論では戦い方の根本原則が異なっているのです。
今回のロシアのウクライナ侵攻は正に戦争論に基づいて実行されているように思います。そして東アジアの隣国、北朝鮮が次々と打ち上げるミサイルも戦争論を前提にすると容易に理解できます。大国中国の軍備増強も戦争論を前提とすれば納得できます。軍備拡張の最終形がどうなるのか分かりませんが、実際の戦争状態にならないようにと願うばかりです。
そこで私はコヴィーの”7つの習慣”を思い出しました。4つ目の成功原則・習慣としてコヴィーは”WIN-WINを考える”を提唱しています。そしてまた5つ目の習慣では”まず(相手の)理解に徹し、そして理解される”が必要だと指摘しています。この2つの成功原則をロシアとウクライナの指導者、そしてNATOの首脳達が理解していれば、今回の侵攻はなかったのではと思うのです。
”WIN-WIN”ではなく、”WIN-LOSE”または”LOSE-LOSE”となれば、負けた相手は少なからず遺恨を持ち「いつかは....」と復讐を誓うに違いありません。”WIN-WIN”は両者ともに勝ち!ですし、逆説的には両者ともにいい感じの負け!となるでしょう。ラグビーでは激しい戦いの後をノーサイドと言います。ゲームセットとはいいません。「戦いはこれまで」と互いの健闘を褒めたたえます。これは”WIN-WIN”の1つのスタイルとも言えそうです。
相手又は両者が明確なLOSEでは何のために戦うのでしょうか。また戦う前からLOSEとなるなら、双方が知恵だしをして第三の策を考えた方が良いのではないかと思うのです。大勝した勝者でなくても、少ない勝ちの勝者でも良いと思うのです。少ない勝ちであれば、相手は最低限でも少ない負けに収まります。いや相手も少ない勝ちになる可能性も高いのです。
ビジネス世界でも、日常の私生活の場においても常に”WIN-WIN”の関係となるように心掛けていきたいものです。