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2025年に65歳定年が義務化?、情報の真偽を確かめることの重要性

 「2025年4月から65歳定年が義務化」という新聞記事に私の目が止まりました。「そんなことはないはずだが???」と考えたものの、その新聞は日本経済新聞なので「ひょっとしたら、正しいのではないか」と思い直しました。ネットで検索したところ、最終的には「65歳定年義務化」の表現は正しくないという結論に至りました。

 日本経済新聞は毎週土曜日に「マネーのまなび」という4頁にわたる記事を連載しています。株式・債権等投資、生命&損害保険、税金や年金諸制度、相続、住宅購入等々、お金に関する問題・課題をターゲットに、様々な視点から論じています。私は毎週、この記事を読んで諸制度等の全体像を学んでいます。勉強になりますこの「マネーのまなび」は。本当です。

 と信頼を寄せていた新聞ですので、上記の記事には「えっ」と思わず頭の中で叫んでしまいました。高年齢者雇用安定法には定年に係る条文があり、企業が定年を定めるときは満60歳を下回らないといけないとしています。また昨年4月には同法が改正施行され、70歳までの雇用継続が努力義務化されました。

 過去の諸法令の施行では、最初から「罰則付きの義務」とせずに、罰則がつなないものの「可能な限り法の要旨を理解した上で努力して欲しい」という「努力義務を課す」ことがあります。65歳超70歳までの雇用継続はこの努力義務とされています。しかし努力義務の努力がいずれはなくなり、義務化されることは間違いないでしょう。その時期は経済界での「義務化やむなし」という風潮が主流を占めるようになった頃だと言えそうです。

 さて話を「65歳定年義務化」に戻します。2013年に高年齢者雇用安定法が改正され施行されています。改正ポイントを要約すると、2025年4月までに制度がなくなる「60歳前半の特別支給の厚生老齢年金支給制度廃止」と年月を合せるために、労使協定を締結すれば特別な条件付で定年後65歳までの継続雇用を会社は拒否することができるというものです。ただし同年同月での「特別支給の厚生老齢年金支給廃止」は男性だけであり、女性は5年後の2030年に廃止されます。女性の方は安心して下さい(笑)。

 将来までの厚生年金制度維持を考えて、支給開始年齢を65歳まで繰下げることが決定しています。しかし仮に定年が60歳で65歳まで働けないとすると、収入がない期間が5年間の長きにわたります。よって国は「定年は60歳でも良いが希望すれば65歳まで継続雇用するように」と企業に要請している訳です。

 この政府の意向を汲み取って、多くの企業は既に「定年を65歳」「定年の廃止」「希望者全員65歳までの継続雇用」の何れかを制度化し就業規則に明文化しています。よって2025年になっても、少なくも「希望者全員65歳までの継続雇用」をうたっておけば、その制度を廃止した上で「定年を65歳」とする義務はありません。

 以上、本稿でメモってきたとおり「2025年に65歳定年義務化」という記事は誤報だということになります。天下の日本経済新聞が間違うという事実。私たちは、全ての情報を鵜呑みすることなく、自分の識見をもとに正誤、信憑性を確認するようにしなければなりません。経営者の皆さん、しっかりと勉強を重ねるということを決して忘れないようにして下さい。私からの警鐘です。