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4月から三菱UFJ銀行は紙の通帳発行に550円の手数料を徴収

 今日(1月14日)の日本経済新聞の小さな記事が目に止まりました。三菱UFJ銀行が紙の通帳を廃止し、紙の通帳を望むお客様には550円の手数料を取るというのです。今年4月からの施行としています。デジタル通帳への移行を促すことを狙いとしています。

 なお、70歳以上の高齢者にはデジタル対応が困難だとして、紙の通帳であっても今まで通り手数料は無料とするようです。印紙税法では通帳発行に際し200円の収入印紙の貼付が求められています。僅か200円でも通帳発行冊数が万、十万単位等で増えれば、その額は億から十数億となるに違いありません。メガバンクは世界の金融市場で戦っていますので、小さなコストであっても無駄と判断されるコストは削減し、競争力を高めていきたいと考えるのは当然なのでしょう。

 私も過去に沢山の通帳を持っていました。給与振込専用、預金・積立専用、クレジット等決済専用等々、複数の金融機関に幾つかの通帳を抱えて、現金・預貯金管理を行っていました。今は集約して開設口座数は激減しましたが、かつての私にも動かない口座を多数持っていたのです。三菱UFJも不活動の口座がかなりあるようで、この口座の管理コストも膨大になるということです。不稼働口座については1550円/年の徴収を既に始めています。これら諸コストを削減したいと考えることは、銀行経営者としては当然の結末だと言えます。

 それでは、私たちが何の批判的精神も持たずに納得できるかというのは別問題です。銀行は個人等から預金を集め、集まった資金を企業への貸出しや株式・債券投資、M&A等投資などで活用し収益を上げています。膨大な数の個人等からの預金が、銀行の事業を展開する上での起点・原点となっているのです。

 よって、預金者の不利益となる行為については、十分な説明を行い、理解を求めることをしなければなりません。どの位のコストがかかっているのか等の情報公開も必要だと思います。利益の公開も必要でしょう。「有価証券報告書に記載があります」ではなく、通帳発行等コストの削減の前に、無駄なコストの削減に努めてきたという事実に係る情報公開も必要だと思うのです。

 決定したことだけを通知し、説明責任等を十分に果たさなければ、法令等に違反しないとしても、倫理的かつ同義的責任を問われる可能性が出てきます。

 経済合理性を強く打ち出す米欧等の銀行であればそれも良しとしますが、日本の銀行は日本人である預金者を基盤に事業を展開しているのです。よって、サイレントマジョリティたる物言わぬ預金者に、「ここまでやるか」と言われる位まで説明し理解を求める経営努力が必要でしょう。経済合理性だけではない、預金者の心情に寄り添った対応が、将来にわたって銀行を支える大黒柱となることを理解して欲しいものです。

 最後になりますが、大分県内の金融機関もいずれは三菱UFJ銀行と同じ決定をするようになると思います。実施日は各行によって異なるでしようが、通帳発行コストや管理コストが経営に重くのしかかっていることはどの金融機関であっても同じだからです。予想するに、金融機関は預金者の負担額を同じ金額にするだろうと予想します。同額にすることで、預金者からの批判・非難をかわし易くなるからです。通帳発行等コストの負担を預金者に求めることになった際には、前述のとおり説明責任等をしっかりと果たしてもらいたいと考えています。