「教員免許更新制度(と研修)の解消」というニュースが飛び込んできました。教員免許の更新制度については詳しいことは分りませんが、法律で制度化されているようです。教員資格を取得した後10年経過すると、30時間以上の講習を受講していない教員は免許状の更新がなされないという制度のようです。
世界各国の教員・教職制度をみると、終身付与という国と更新制度有という国に分類できるそうです。日本は2000年代初頭の議論を経て、終身付与から更新制度へと変更になった経緯があります。この更新制度が2023年(令和5年)に”発展的解消”するというのです。”発展的解消”とはなんと語呂の良い表現でしょうか。はっきりと「止める!」とは言わずに、「別の良い制度を考えてみましよう」という意味も含んでいます。しかし更新制度と同種の制度の再導入を何人も望むことはもうないでしょう。よって「制度廃止!」が正しい言い方と思うのです。
ところで、私が持っている主要な士業である中小企業診断士には更新があります。5年毎に資格が更新されます。資格更新申請には「毎年4時間以上の行政政策等を学ぶ講習の修了(5年間で5回)」と「5年間で30時間以上のコンサルティングの実績」が求められています。この2つの要件を満たせずに、更新をせずに資格を流す先生や資格停止を選択する先生もおられます。資格停止とは、一定期間「中小企業診断士としての活動を中止する」ことで、一定要件を満たせば資格の復活ができます。
また社会保険労務士では積極的な研修参加が努力義務とされ、所定の講習に参加すると「出席した事実を証明する附票(シール)が交付」されます。この附票を社労士手帳の所定の場所に貼付していきます。更に5年毎の倫理研修も義務付けされています。
身近なところでは、運転免許証には5年又は3年毎に更新を受けなければなりません。自動車等は一歩誤れば生死に関る重大事故に繋がるために、一定の法令知識の再習得と運転に去来するリスク等を再確認する必要があるからです。
このように、更新制度がある国家資格も多いのです。教員資格の更新制度を廃止するに至った理由の一つに、「30時間の講習が負担になる」というものがありました。10年間で30時間とすれば、一年平均で3時間です。教員は日本の未来を支える子供たちの健全成長に寄与する重要なお仕事です。よってひと昔前では聖職とも呼ばれていました。それにも拘わらず、10年間で30時間の講習が負担になるとはなんという詭弁でしょうか。
更に「講習内容が古い」「実務に即していない」などの講義内容に対する不満がかなり多いのです。先ほどの運転免許講習では基本の基本を学びます。「理論が古い」のではなく「とても大切、重要な理論だから再確認しておくべきだ」と考えを改めるべきです。そしてなお、「講習内容が不適合である」とすれば、講義内容の改善に向けての努力をすべきなのです。
今回の教員資格更新制度の”発展的解消”のニュースをみて、未来の日本を担う子供たちの教育は大丈夫なのかと思わず考えてしまいました。