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トヨタ、4月~6月の利益8978億円。その秘訣はどこにあるのかを検討する

 8月5日付の日本経済新聞の一面に、「トヨタ米販売、初の首位」「4~6月最高益8978億円」というタイトルで記事が掲載されていました。四半期で9千億円の利益ですから、単純に年換算にすると3兆6千億円となります。日本企業、日本経済を牽引するリーダー企業としてトヨタに大いに頑張って欲しいものです。

 この記事に図表が添付されていました。図表によれば、世界四大市場でトヨタの市場シェアーが上昇しているようです。日本市場のシェアーは34.1%、米国市場は15.2%でGMなどの自動車メーカーを引き離してトップに立ちました。欧州市場は6.3%、中国市場は7.8%です。日本でのシェアーは横ばいに近いのですが、他の3市場では明らかに上昇傾向にあります。ここにトヨタの強さがあるように思います。

 事業ドメインという考え方があります。「自社がどのようなビジネスを行うのか」という質問の解答が事業ドメインです。事業ドメインは3つの軸で構成されます。「製品・役務」軸、「市場・マーケット」軸、「手法・活動」軸の3つです。「誰に」「何を」「どのように」売っていくのか、を考えて行くと事業ドメインは分り易いです。

 トヨタは全世界で多数の自動車メーカーと競争しています。自動車市場にはテスラの様な、これまで自動車メーカーと呼べなかった会社が新規に続々と参入してきています。ある市場で断トツ一番の業績を上げても、別の市場ではどん尻で鳴かず飛ばずとなれば、安定的な利益を獲得し続けることはできません。世界の市場を購買規模(販売台数)や地理、政治的要件等で幾つかの市場に細分化し、複数の市場で一定の率以上のシェアーを獲得する。このような営業・販売体制が確立していれば、特定の市場で苦戦したとしても、会社の業績はある程度安定的に推移します。

 トヨタの競争相手であるVWは欧州市場と中国市場とで大きな販売量を確保しています。しかしこの2つの市場以外では大きな売上(台数)を確保できていません。従って、欧州又は中国の何れか一つ又は両方で販売台数を落としてしまうと、全社をカバーすることができなくなります。ここにVWの弱さを見て取ることができます

 トヨタは4市場で万遍なく売上(台数)とシェアーを上げてきています。ここにトヨタの強さがあります。ある市場で売上(台数)が急減しても、他の3市場でその落込みをカバーできるからです。トヨタの市場開拓戦略を他の企業を学ぶことができます。大企業だけではなく中小企業も学ぶことができます。「複数の市場で戦う」という戦略を企業は採用すべきだと私は思っています。