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価格競争に陥らないコツ

 ある社長から相談を受けました。「電話やメール等で取扱商品についての問合せがきます。私が丁寧に説明した後(メールで数回やり取りした後)、相手は類似商品を他のサイトや販売店で購入します。また価格の値下げを要求され、応じないと購入せずに交渉は打ち切りです。無駄骨を折るばかりで儲けに繋がりません」。このような悩みを訴えてきた経営者に対し、どのような助言をすれば良いでしょうか?

 私は先ず「価格競争はしてはいけません」と助言しました。同業又は異業を問わず、他社との価格競争になれば、「貧乏暇なし」「豊作貧乏」に陥ってしまいます。売上は上がるのですが、利益が残りません。最悪なのは資金繰りも悪化します。また一度購入した相手は、次回以降も同じように「もっと安くできませんか」と価格引下げ要求を強化してきます。中小企業は絶対に価格競争をしてはならないのです。

 次に「自社の製品・役務の強みを確認する」という事を助言しました。同じように見えても、他社製品と自社製品との機能に多少の相違点があれば、それを価格競争の防止策として利用するのです。「価格は当社の方が高いです。しかし、当社製品は貴社にとってお役に立つ〇〇の良点があります。これは当社の製品だけが持っている機能、特徴です」と説明するのです。それでも、この説明に乗ってこない相手はほどぼとの対応でOKです。「時間が勿体ない」と割り切ることです。

 特に役務(サービス)の特異点は他者には見えないものです。製品は形があるので他の製品と比較検討ができます。しかし形のない役務等は、交渉相手や他社には特異点、良点、強みや特徴等は分りません。従って、会社内でしっかりとこれらの強み等を整理しておき、問合せがあった時に必ず説明を行うのです。

 最後に、「問合せに対し全てを答える必要はない」とも助言しました。問合せの目的は「製品を購入する」ことではなく、「情報を得る」ことにあります。相手が求める情報を入手すれば、それに適合した製品をWEB上で検索し見つければ良いのです。「価格が安ければ・・・」と思っている相手は、その位の時間と労力は費やすことを苦に思いません。

 「肝心かなめの情報はブラックボックスにして公開しない」のが鉄則です。上杉謙信は敵方の武田信玄に塩を送りました。「敵に塩を送る」のは、自社が圧倒的シェアーを握り、他者の追随を許さないというポジションにある時以外は、止めるべきです。絶対に行ってはいけません。世の中は綺麗ごとではコトは進まないのです。相手が善人だと思うのは、よほどの信頼関係がある時以外は考えないでおきましょう。

 「情報のブラックボックス化」をすれば、相手方は喉から欲しい情報なので、自社の製品や役務を購入しなければ、自分の想いを実現できません。このようにして、自社の立場を有利にする、という戦略的な発想が必要なのです。