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確定申告に想う赤字企業の黒字企業への転換支援策

 確定申告が16日(火)から始まりました。例年だと3月15日までの1か月間ですが、新型コロナウイルス感染症による影響を考えて、昨年と同じく4月15日までの2か月間が申告期間となりました。私も顧問先等から源泉徴収票を入手し、申告書作成の前準備を終えました。

 ところで、日本の企業の7割が赤字企業であるということをご存知でしょうか。個人企業と法人企業とを含めて、日本では約360万の企業があると言われています。そのうち、約55%が個人企業だそうですから、個人企業数は198万社ということになります。個人企業は事業規模が小さいため、売上や利益、また雇用する従業員数も多くないと思います。個人企業や法人企業の区分とは別に、中小企業という捉え方もあります。中小企業に雇用されている従業員数は総従業員数の約7割という統計もあるようです。ちなみに企業数では中小企業の割合は99%にも達します。

 この中小企業の範疇に入る個人企業の確定申告が始まったのです。そて、どれだけの企業数が黒字決算となり、また所得税や住民税などの納税義務を果たせるのでしょうか。こう考えている時に、私ははたとある事に思いが飛んでいきました。「7割の赤字企業が黒字化し、所得税や法人税をしっかりと納税できるようになれば、国家財政も緩和されるのではないか」。

 前述のとおり、企業数は360万社で赤字企業の割合が7割と推定されていますので、赤字企業は252万社(360万社×7割)となります。仮に赤字企業の割合が4割になったとします。赤字企業は144万社(360万社×4割)となり、差し引き108万社が黒字企業へと転換します。仮にこの黒字企業一社当たり100万円の納税ができるとすれば、税の増収額は1兆0800億円(108万社×100万円)となります。国の借金は1100兆円に達するようですから、1兆円程度の増収では焼け石に水かもしれません。

 しかし、赤字企業が黒字企業に転換すると、企業が納める所得税や法人税の納税額が増える以外の副次効果があると思うのです。例えば、黒字企業であれは、従業員の給与は確実に上がっていくでしょう。また従業員の新規採用にも力が入るかもしれません。ということは、給与所得が増えるのでこれに伴う所得税等が増えていくに違いありません。

 また、黒字を確実にし更に増やしていこうと考える経営者は、設備投資にも積極的になると思います。IoTやDXなどの技術革新の波に乗った設備投資を行っていくに違いありません。とすれば、設備投資をする元となる機械・器具等の生産活動が活発化します。そして生産財を生産する企業も増収増益を果たすようになるでしょう。

 こうして考えを膨らませていくと、赤字企業を黒字企業へ転換させていくということの重要性がひしひしと分かってきます。国等の中小企業支援策の1つに、人財教育等への支援も含めて欲しいものです。経営能力が低い経営者の下では、黒字転換は難しいでしょう。また、従業員の能力・スキルアップのために、在職中でもあっても新しい知識等が学べる機会の提供、リカレント教育の振興にも注力して欲しいものです。経営者と従業員の二つの両輪で、能力・スキル・技術等のUPを計っていけば、赤字企業から黒字企業への転換の可能性は確実に高まっていくことは間違いないと思うのです。