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ホンダと日産が経営統合する可能性は?

 自動車業界は100年に一度の大変革の時代にあります。AI技術を活用した自動運転、EVを中心に展開している環境に優しい車、事故による不幸な人をを作らない安全装備の開発競争等々、世界最大手のトヨタでも明日はあるのか見えない状態です。

 自動車産業は巨大な装置産業です。車の生産には巨大な生産工場が必要で、また組み立てラインを維持するロボットや質の高い従業員の確保も重要です。損益分岐点は概して高いようです。よって、販売台数が落ち込むと赤字に転落する可能性もあります。トヨタは2008年のリーマンショックで世界販売台数が落ち込み赤字に転落しました。この苦い体験をバネに、現在のトヨタは20%強の販売台数減少があっても黒字を確保できる体質に改善したようです。血がにじむようなカイゼンが展開されたのでしょう。

 このような自動車業界では米国テスラの動きが注目されています。名物経営者のイーロン・マスク氏が率いるテスラはEV車を製造販売していますが、年間販売台数は100万台前後というところ。しかし、株式の時価総額では年間販売台数1100万弱のトヨタを既に追い越しています。それだけマーケットの成長期待が大きいということでしょう。

 国内には片手以上の自動車メーカーがあります。国内市場の今後は縮小傾向にあるため、どうしても海外市場で稼がなくてはなりません。生存競争が厳しいのが昨今の自動車産業です。その中で、令和元年末にホンダと日産の統合計画があったと、日本経済新聞の8月18日付朝刊が報じていました。両社のコメントは「答えられません」のお決まりのフレーズでした。

 両社の統合計画は政府からの提案であったというのですからまた驚きです。日産は三菱自動車とフランス・ルノーとで三社連合を形成しています。カルゴス・ゴーンがトップの時は三社間での軋轢は表面化しませんでしたが、三社間では主導権を日産又はルノーのどちらが握るのかで確執があるようです。自動車産業は日本経済を担う基幹産業です。没落しつつある日産が更に業績悪化となれば、雇用を始め産業界に警戒心を発生しかねません。そこで、政府が主導してホンダとの統合を狙ったというのが本音でしょうか。

 ホンダの販売台数は500万強、日産は同500万弱で両社を合算すると1000万台となります。ルノーはフランス政府が主要株主で経営に口を挟んでいます。うるさ型のフランス政府から逃れるためにホンダと統合するという裏の手があっても良いかもしれません。いずれにしても新聞報道がなされた中で、両社の今後の経営戦略が注目されます。