少し前の日本経済新聞の書籍広告欄に、今年2月に84歳で鬼籍に入った野村克也氏の最新作の紹介がありました。「上達の技法」という書名、早速アマゾンで購入し読了しました。競争厳しいプロ野球の世界で、三冠王やホームラン王、首位打者等々数々の名誉を勝ち取った野村克也氏ですが、名選手でありながら名伯楽でもありました。
書籍の帯に「『失敗』と書いて『成長』と読む」と書かれています。野村氏は京都府の片田舎の無名高で高校野球をやっていました。「お母さんを楽にしてあげたい」という一心で南海ホークスの新人募集試験に挑戦し合格。しかし同期7名のうち4名は捕手で、プルぺンで投手の相手をする日々が続いたと綴っています。しかし、折角プロ野球選手となったからと、人の2倍、3倍と練習に励みテスト生での入団から3年目にレギュラーの座を獲得します。そして4年目にホームラン王になるのです。努力すれば必ず実る!、その言葉が身にしみて分る体験談です。
44歳で選手生活を終えた後、解説者として名をはせます。地方で講演等があるときは駅で本を数冊購入し、車中(飛行機中)に読み漁ったそうです。プロ野球の監督は全て大学卒という事実の中で、監督の依頼は来ないものだと野村氏は考えました。しかし、妻の沙知代さんから「勉強しなさい」と評論家の草柳大蔵氏を紹介されたそうです。草柳氏の博識ぶりに驚嘆し、学ぶことの大切さを悟ったのです。
野球解説ではそれまでの解説者と異なる視点から解説していたようですが、これも多読による成果の表れでした。解説者として9年を経て、ヤクルトの球団社長の来訪をうけます。監督就任のお願いでした。監督就任後は弱小ヤクルトスワローズを優勝回数4回、日本一3回の常勝チームに変貌させました。名伯楽の物語は、阪神タイガース、東北楽天ゴールデンイーグルスへと続きます。
人の能力の格差はそんなに大きくはないと思います。しかし努力するという習慣を身につけなければ、その潜在能力や未知の能力を開花させることはできません。地道に努力をすることの大切さをこの本から学ぶことができます。自分を月見草と揶揄したその相手である巨人軍の長嶋茂雄や王貞治も天才であったものの、その一方で努力家でもありました。人が見ていないところで努力をしていました。天才でありかつ努力するのですから、素晴らしい成績を上げるのは当然です。
しかし心配ありません。普通の凡人でも努力を続けていけば、必ず大樹となりうるのです。その見本が野村克也氏の生き様だったと私は思います。是非ご一読下さい。