今回もテレワーク等新しい働き方に関しての投稿です。テレワークによる勤務が「新しい日常」となると月額給与が変わってくるかも知れません。そして月額給与の変動が将来の年金水準にも影響してくるかも知れないという話をしてみたいと思います。
月例給与は基本給のほか、役職手当や資格手当等の諸手当が含まれて支給されています。個々の企業によっては「諸手当がほとんどない」とか「残業代が多い」などの特徴があるでしょう。本ブログでは一般的な企業を想定して言及していきます。ご了承ください。
テレワークが「新しい日常」となれば、先ずは通勤手当の出し方が変わってくるかも知れません。月22日勤務する社員(以下にA)に対して、通勤手当を3万円支給していたとします。Aさんの月額給与は毎月29万円(諸手当等全て含む)だとすると、厚生年金での標準報酬月額は30万円と算定されます。(※厚生年金での標準報酬は31等級定められています。各等級毎に上限額と下限額が決まっています。月額給与が29万円だと、19等級(29万円以上31万円未満)に該当します)
Aさんは会社の指示に従って在宅勤務や直行直帰の仕事をするようになり、会社・本社に出勤するのは週一の月4回になったとすると、会社は通勤手当の3万円を大幅に減額することになるでしょう。例えば、月5千円(現在より2.5万円減額)という具合に...。
とするとAさんの月額給与は27.5万円となり、厚生年金に係る等級は19等級から18等級(標準報酬28万円(27万円以上29万円未満))と1等級引き下げられます。Aさんは通勤手当で定期券を購入していたので、2.5万円の減額と定期券購入費が相殺され、毎月の現金収支では実質的な損得はないかも知れません。しかし、Aさんが65歳に達して厚生年金の受給資格を得た時に、支給される厚生年金額が少なくなる恐れがあります。
少し単純化して説明をします。Aさんの標準報酬が2万円減額(19等級-18等級=30万円-28万円)のまま65歳まで勤務したとします。Aさんは現在30歳だとすると、65歳で退職するまで35年勤務することになります。平成15年4月以降の厚生年金額は次の計算式で求められます。平均標準報酬額×(5.481÷1000)×被保険者月数(注.平成15年3月以前の計算式は異なります)。
Aさんの平均報酬月額はテレワーク前よりも△2万円(※19等級から18等級へ移行した事実が将来も続くとした前提)です。65歳到達時までの月数は420月(35年×12カ月)です。これを計算式に当てはめてみます。△20,000円(平均標準報酬額)×(5.481÷1000)×420月(被保険者月数)=△20円×5.481×420月=△46,040円。年間で46,040円も年金額が少なくなるという計算結果です。
短期的にはテレワークの推進は是非とも実行してもらいたいものです。テレワークはCOVID-19対策だけではなく、労働生産性向上と働き方改革とに密接にリンクしているからです。しかし、その推進の過程で諸手当の減額等を行うと将来支給される厚生年金額が減ってくる可能性が高まります。難しい判断を経営者には求められているのです。