新年明けましておめでとうございます。令和2年はどのような年になるのでしょうか。ネズミ年の今年、ネズミが狙う穀物倉庫よろしく、経済的にも社会的にも環境的にも実り多い年になって欲しいものです。
しかし昨年末に驚愕のニュースが日本のみならず全世界を掛け巡りました。日産の元会長カルロス・ゴーン氏が秘密裡に国外逃亡した事件です。ゴーン氏は中東レバノンのほか、ブラジルとフランスの国籍も持っているとのこと。日本の国籍法では、二重国籍の人は原則として22歳到達時点までに日本国籍又は他国籍のいずれかを選択して届出なければならないというルールが定められています。よって、原則として22歳以上の成人では二重国籍者はおられません。
と二重国籍に係るうんちくを記述しましたが、ゴーン氏が国外逃亡した理由が「日本の司法制度が被疑者や被告人の立場におかれている人に対して不法である」ということを上げています。国内外のメディアはゴーン氏事件に関わらず、刑事事件案件に関し「不当に長い拘留・勾留を検察が裁判所に要求し、裁判所がこれを許可するのは問題だ」と指摘してきました。私は幸いにも刑事事件に巻き込まれたことがないので、拘留・勾留を経験したことがありません。しかしながら、(本人が不法と思えるほどの期間の)拘留・勾留に納得できないからと言って、裁判所が付けた保釈条件を無視して、楽器収納庫に隠れて国外脱出するというのは如何なものでしょうか?
報道によれば、国外逃亡を手助けした外国人は十数人にも及び、数カ月間国内各空港における不備を調査というのです。日本の法制度を無視したゴーン氏の姿勢に怒りすら覚えます。古代ギリシャの哲学者ソクラテスは不当な裁判を結果、毒杯を呑んで死亡しました。周囲の者が逃亡を進めましたが、「悪法であっても法に従う」とソクラテスは話したといいます。この話をゴーン氏は知らなかったのでしょう。
1997年(平成9年)に日産のCEOに就任し、落城寸前だった日産を復活させた経営者の手腕・辣腕は勉強する価値があるものです。しかし、人は同じ地位に座り続けると独裁者となっていきます。特に過去に優れた成果を上げてきた経営者は、社内外の人たちが異見を物申すことを遮断・拒否する傾向が強くなるでしょう。年老いた経営者が老害化していくのと同じ論理です。
ゴーン氏は人生の晩年を汚してしまいました。もはや、逃亡先のレバノンから出国することはないでしょう。フランスのルノー(とフランス政府)がどのような対応を見せるのか。ゴーン氏秘密裏に国外逃亡のドラマの余波はまだまだ続いていくことでしょう。