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「真似ぶ」と「コピーする」

 私は日経MJを愛読しています。月曜、水曜、金曜の週3回の配達です。日本経済新聞では最終頁に「私の履歴書」が連載されています。私は毎日、興味深く読んでいます。現在の連載は一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が担当です。ナレッジマネジメントの基礎となる形式知と暗黙知とを提唱された先生で、優れた経済学者です。商業高校の出身なのに簿記が全くダメ、という驚きの告白もありました(笑)。

 この「私の履歴書」の日経MJ版が「~HISTORY~暮らしを支えた立役者」です。約20回程度の連載です。登場する経営者の思想や経営哲学が語られており、とても勉強になります。現在はベビーシッター業界の雄、ポピンズを創業された中村紀子氏が担当されています。

 今日(01-09-11)の連載では、会社創立後10年目位から大手企業がベビーシッター業界へ新規参入してきたという事実が語られていました。新規参入障壁が低いので仕方ありません。しかし読み進むと、ポピンズの入会手申込書や規約などをことごとく真似されたとあります。「ある企業のベビーシッター個人契約書を見たら、会社名以外はポピンズと同じではありませんか」という記事も。

 これは知的財産権の侵害に当たる事案ではないでしょうか。その当時には、まだ知的財産権の保護という意識が低かったのでしょう。だから大手企業も平気でコピーしたと思います。現在では注意すべきアクションです。

 経営戦略では成功例を学び、失敗例からも学ぶという策は良しとされています。他社事例に「真似ぶ」ことで、市場に対してより良いサービスを提供すれば社会・経済全体の発展・発達に寄与できると考えるからです。但し、「全てをコピーする」は成功例や失敗例から学ぶという姿勢が欠如しています。

 先行企業が「何故成功したのか」「失敗した原因は何なのか」をしっかりと分析した上で、商品やサービスのバージョンアップをしなければ、新規参入者が勝利し続けることは困難でしょう。

 中村社長は新規参入者のその後は書かれていません。ただビジネスモデルをコピーしただけでは、ビジネスの根幹を理解した訳ではないため、現在も事業を継続しているとしても大きな成果を出しているとは思えません。

 先行企業を「真似び(学び)」、そして更にビジネスモデルのブラッシュアップを図っていく。このような姿勢で日々取り組んで行けば、勝利者であり続けることは可能です。自社の成長戦略を展開する際の参考にしたいものです。