日本のテーマパークの世界において、大きな存在感を示している関東の東京ディズニーリゾート(ディズニーランド&ディズニーシィー)と大阪のUSJジャパン。最近の両者の価格戦略では少しずつ差異が出始めたようです。
USJジャパンは8年連続!で入場料を引き上げました。8年前はディズニーリゾートの方が高かったようですが、最近ではUSJジャパンが逆転したようです。何故USJジャパンは、8年連続で値上げを敢行し、利益額では大きい(だろう)東京ディズニーリザートをも上回る価格設定をしたのでしょうか。そこには、テーマパーク側の驕りがあるように私は思えるのです。
「新アトラクションの設置はお客様が求めている」「価格を引き上げていても客数は増えている」「市場が日本から東南アジアへと拡大している」「継続的な設備投資のために多額の資金が必要だ」等々、理由をあげさせればドッと出てくるでしょう。しかし、この値上げ理由は会社・施設側からの主張でしかありません。
「品質が良いものが必ず市場から支持されるとは限らない」。経営の目的は「継続すること」であり、その原資として利益獲得が求められます。利益の元は売上です。売上の元は売価です。経済学では売価は需要と供給の接点で決まるとします。しかし購入する側の”心理状態”が実際の購買行動に大きく影響を遭えることを見逃すことはできません。2018年のノーベル経済学賞の受賞者は行動経済学の分野の第一人者でした。お客様心理の変遷、動向が実際の購買行動にどのような影響を与えるのかを研究したのです。
毎年上がり続ける入場料。現時点では「USJジャパンに行きたい」という心理が「高い価格を敬遠する」心理よりも上回っているようです。しかし将来は「この料金を払うのなら、他の施設に行ったり、モノを買ったりした方がお得だ」という心理反転が起こるかもしれません。
マーケティング戦略にたけたUSJジャパン。2019年1月10日(木)から入場日に応じて入場料が変わる変動価格制を導入しました。サッカーやプロ野球の世界では一部で既に導入されており、収益増大に貢献しているとのこと。サービス業では価格変動で需給バランスをとるというのは基本戦略でもあります。しかしお客様(市場)の支持あっての価格変動制です。
8年連続の入場料アップと価格変動制導入の理解を求め続けることが必要です。SNSで「USJジャパンは高い」「儲け主義に走っている」と炎上騒ぎになれば、鎮火に相当な労力と費用、時間がかかることになります。お客様目線で事業を行うことの大切さをUSJジャパンの8年連続値上げの意思決定に私は診た思いです。