社会・経済

社会・経済 · 2025/01/28
 経営学者で一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が1月25日に89歳でなくなりました。野中先生を有名にしたのは何と言っても【失敗の本質】でしょう。複数の学者との共同研究の成果を書籍にした共作ですが、野中先生が防衛大学の教授時代に発刊された名著です。太平洋戦争で何故日本軍が無謀な戦いに挑んで敗退したのか、組織構造や意思決定システム等の分野において、敗退には明確な根拠があると喝破しました。私も読みました。納得のいく内容であり、企業経営にも応用できる考察が随所に出てきます。  さらにナレッジマネジメントの概念を提唱し広めたことにも多大な貢献をされています。会社には様々が知恵がふんだんに蓄積されています。しかし大半は個々の社員のノウハウやスキルであり、会社全体では共有されていません。宝の持ち腐れの状態です。会社は人の集まりですから、個々の社員が持っているノウハウ・スキルを有形無形に交錯させておかないと、会社の総合力は予想外に低い水準のままです。個々の社員が持つノウハウやスキルを他の社員や社内に伝播させていく仕組みが重要なのです。  個々の社員が持つノウハウやスキルは暗黙知です。暗黙知は明文化や視認化されていないものが大半です。暗黙知の対極にあるのは形式知です。形式知は明文化されているので、社内での共有を促進させることが可能です。概ね社内のノウハウやスキルの総体を100とすると形式知は10、暗黙知は90という具合です。よって個々の社員が持つ暗黙知を形式知に変換させていく仕組みが必要となります。  このような工程の重要性を教えてくれたのがナレッジマネジメントなのです。最近はこの言葉が忘れられたような気がします。ナレッジマネジメントは次のフローで深化・進化していきます。①暗黙知を形式知に、②形式知を社内全体に共有(深化)させ、③新たな暗黙知の醸成を促し、④そして新たに生まれた暗黙知を形式知へ転換していく。こんな具合で社内にあるノウハウやスキルを正の循環でバージョンアップさせていくのです。  米国発の経営理論が多い中で、野中先生は日本の学術界でも斬新な経営理論を産み出し発展できることを証明してくれました。私も大いに学ばさせていただきました。ありがとうございました。
社会・経済 · 2025/01/24
 経団連と連合との間で今年の賃金引上げに係る交渉が始まりました。消費者物価上昇率の2%超えが常態化した昨今、賃金引上げは労働者の安定した生活の保護という側面からも重要となっています。人手不足倒産などという言葉が発信されています。中小企業では社員確保が深刻化する中で賃金引上げは最重要な手立ての1つであることに間違いありません。...
社会・経済 · 2025/01/21
 迷惑電話を受けたり、詐欺まがいのメールを受信した方も多いのではないでしょうか。今日(1/21)の大分合同新聞に【詐欺被害23億円を超す】という見出しで関連記事が掲載されていました。大分県内では昨年度は特殊詐欺に関して2.4倍、SNS投資・ロマンス詐欺で1.6倍、前年度より増加したとあります。...
社会・経済 · 2025/01/17
 前回に引き続き大地震の話です。今日1月17日は30年前の平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災が発生した日です。私はこの日時を忘れることはできません。何故ならその時期に私は福岡市で中小企業診断士の3次試験(実務試験)を受講していたからです。...
社会・経済 · 2024/12/24
 Xmasの直前に大きな経済ニュースが飛び込んできました。日本の自動車メーカーで第2位のホンダと第3位の日産が経営統合に向けて合意したというニュースです。日産と関係が深い三菱自動車も来年1月までに統合協議に参加するかを決定するそうです。中国メーカーに追い上げられている日本車メーカー。三菱も単独では生き残りは困難とみられることから、三者の経営統合という形におさまることでしょう。  何で日本の自動車メーカーがEV化に乗り遅れたのか不思議でたまりません。特に日産はカルロスゴーンがCEOのときに、世界各国の自動車メーカーに先駆けてEVを発売したのにです。経営戦略や新車開発戦略に一貫性がなかったのでしょう。どの分野に集中的に設備投資をしていくのか、その決断が日産をはじめとする日本車メーカーに欠落しているのです。新車開発に多額の資金を投入してきたとしても、これまでの成功事例である内燃機関車に資金を集中したのでしょう。EV等CO2を出さない又は少なくするという大命題への感知力が衰えていたに違いありません。  今回の統合への向けての協議、ホンダは貧乏くじを引くのではないかと心配です。日産の体たらく性は骨の髄までしみ込んでいるに違いありません。絶体絶命という窮地にありながら、必死さの熱量が経営陣から感じられません。弱者救済型の経営統合ではないでしょうか。日産にホンダが足をとられなければ良いのですが...。  何れにしてもトヨタ以外の日本車メーカーの統合の動きは加速することはあっても減速することはないと思うのです。
社会・経済 · 2024/12/17
 日本経済新聞の12月17日付け朝刊に少し興味がそそられる記事が掲載されていました。【温暖化で暑くて働けない】【働き方の見直し迫る】【労働機会損失 全世界で「5000億時間」】。こんな見出しが私の目に飛び込んできました。...
社会・経済 · 2024/12/13
 日本の国際社会におけるポジションが低下していることに残念がっている人は多いと思います。私もその一人です。政治はとうの昔から3流いや4流の世界だから問題はありません(?)。問題は科学・技術力や次世代の日本を担う世代の学力の低下です。それ以外にも経済力の低下は由々しき問題です。経済力の低下は国力の低下を引き起こすからです。...
社会・経済 · 2024/11/20
 先の衆議院選で与党が大敗し、野党特に国民民主党が躍進しました。国民民主党は所得税が徴収され始める103万円の壁を撤廃し178万円まで引き上げることで、手取りアップを実現させるという公約が若者を中心に支持を集めました。...
社会・経済 · 2024/11/01
 世界の自動車業界の地図が大きく変わろうとしています。中国車の台頭著しい現在は、過去の日米欧韓...
社会・経済 · 2024/10/29
 10月29日(火)付けの日本経済新聞に興味深い小記事が掲載されていました。見出しは[セブン、名前表記を役職・頭文字に]とありました。この記事を読むとCVS最大手のセブン・イレブンがお客様からのカスハラ防止の為に、これまで名前表示にしていた名札の記載方法を変えることにしたとあります。ここまでカスハラ対応に苦慮しなければならないのかと理解した次第です。  カスハラとはカスタマーハラスメントの略です。セクハラやパワハラは法律によって規制がかかっていますが、パラハラはまだ法定化されていません。東京都が来年4月の施行を目途にカスハラ条例の策定に動き始めています。それほどカスハラは社会問題化していると言えるでしょう。  カスハラの定義は定まっていません。簡単に要約すると「お客様からの苦情のうち、要求内容の妥当性に照らして、要求を実現する為の手段・態様が社会通念上不相当のものであって、労働者の就業環境が害されるもの」と言えそうです。要点は3つあります。①要求内容が妥当でないこと、②要求の実現手段が社会通念上不相当であること、③労働者の就業環境が害されること、の3つです。  セブン・イレブンでも上記3点に照らして問題ありという事案が多発しているのでしょう。相手は従業員の名札をみて「〇〇!、謝れ!!」などと大声を出す場面もあるのでしょう。このような状況下で自分の名前を連呼されることは心身を不健康に陥れるに違いありません。  セブン・イレブンの対応をみて右に倣えをするCVSが増えてくるかもしれません。お客様はどんなことを言っても許される訳ではありません。私も単純湯沸かし器的なところがあります。対人関係においては十分心して接していきたいものです。

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